「潔癖社会」純度上昇中【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第22回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「潔癖社会」純度上昇中【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第22回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第22回

 

【スリリングなドライブ】

 

 忙しい庭仕事も、ようやく一段落しそうである。というのも、植樹をする季節がそろそろ終わりだから。草もそれほど伸びなくなるので草刈りの頻度も下がる。緑が生い茂り、庭園内全域が木陰になったし、夜に雨が降る日が増えたから、水やりも楽になる。その分、工作に勤しんでいる。今年の初めから、模型のエンジンに熱中していて、エンジンで走る機関車や戦車を幾つも作った。オイルで手を真っ黒にして、ぶんぶん大きな音を立てて遊んでいる。

 先日、僕のクラシックカーを奥様(あえて敬称)が初めて運転した。山間のワインディングロードを30kmくらい走った。僕は助手席でときどきギアチェンジの指示をしただけ。なかなかスリリングだった。4年間、調整や部品交換をした結果、僕以外でも運転ができるほど調子が良くなったのだ。ただ、奥様は「ギアを換えないといけない車」に懲りたのか、その後「運転したい」とはおっしゃらない。

 

庭園内はすっかり木陰になった。森の中の涼しさと静けさを、都会の人は知らない。ただ、ガーデニングをするには、あらゆる植物が大きく育たない。農地というのは、樹を伐採した人工環境だということを知らされる。

 

文:森博嗣

 

KEYWORDS:

✴︎森博嗣 最新珠玉のエッセィ✴︎

日常のフローチャート Daily Flowchart

✴︎絶賛発売中✴︎

 

[caption id="attachment_3661533" align="aligncenter" width="525"] ※カバー画像をクリックするとAmazonにジャンプします[/caption]

 

連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」がついに単行本化され発売に! 総頁数:344頁。未公開の書き下ろし原稿(第36〜40回)も収録。視点が変わると、人生も変わる!あなたにとって大切な一冊になるとお約束します!

 

「無事」を重ねることが、人生の成功である。少し気をつけていれば、誰でもできる。ときどき予期せぬ不運が襲ってきても、また少しずつ無事を重ねて挽回していけば良い。勝たなくても良い。負けても良い。またの機会を待てることこそが、成功の価値なのである。(第35回「充実した人生に唯一必要なもの」より抜粋)

 

◉人生はプログラミング◉水を差しにくい社会◉話し上手と書き上手

◉老人になっても社会人である◉余計なものを持つことの価値

◉気持ちという質量◉「潔癖社会」純度上昇中◉ジェネラリストは存在しない?

◉どうなれば成功なのか?◉適度な自己中のすすめ◉アイデアを思いつける人

◉思いつきの手法◉新しい価値は無駄から生まれる◉頭は知識で肥満になる

◉楽しければそれで良いのか?◉効率か快適か、それが問題だ

◉自己利益が最重要な方針◉作るために必要なこと

◉一人でいることは、自由の象徴◉充実した人生に唯一必要なもの

◉AIが活躍する未来って?◉的確な質問をする能力

◉ネットのモラルはこれから◉フィクションを楽しむ条件

◉いつ死んでも良い生き方とは etc.

オススメ記事

森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

歌の終わりは海 Song End Sea (講談社文庫 も 28-86)
歌の終わりは海 Song End Sea (講談社文庫 も 28-86)
  • 森 博嗣
  • 2024.07.12
静かに生きて考える
静かに生きて考える
  • 森博嗣
  • 2024.01.17
道なき未知 (ワニ文庫)
道なき未知 (ワニ文庫)
  • 博嗣, 森
  • 2019.04.22